田畑が広がるたくみの里では、秋の暮れになるとたくさんの稲が干され、その後にわら(藁)がつくられます。山崎勝さんが店主を務める「わら細工の家」では、わらを使った昔ながらの生活用具づくりを体験して、たくみの里の郷土に触れることができます。
たくみの紹介
Vol.9
わら細工の家
山岸 勝
Vol.9
山岸 勝
田畑が広がるたくみの里では、秋の暮れになるとたくさんの稲が干され、その後にわら(藁)がつくられます。山崎勝さんが店主を務める「わら細工の家」では、わらを使った昔ながらの生活用具づくりを体験して、たくみの里の郷土に触れることができます。
1989年から地元の人たちが協力して運営している「わら細工の家」。「陶芸の家」などと同じく、たくみの里の創設期にできた“たくみの家”です。たくみの里の近くで生まれ育った山崎さんは、公務員として40年以上務め、2017年に「わら細工の家」の店主になりました。
「私が小さい頃は、わらは生活必需品でした。秋に稲刈りが済むとたくさんのわらができる。冬になると、それを使って、農作業のためのわら靴をつくったり、わら葺きの屋根を新しくしたりと、生活のさまざまな場面でわらを使っていたんです。時代が進むにつれ、その需要はだんだんと減っていきましたが、代わりに今では、わらアートなど、これまでになかった方法で使われていますね」
「わら細工の家」で体験ができるのは、わらぞうりなどの生活用具づくり。どちらも昔から変わらない方法で一から編み上げていきます。一見シンプルに見えるわら細工ですが、手際よく編むのはなかなか難しいそう。たとえばぞうりづくり。初めての人は1時間ほどかかるところ、山崎さんは10分足らずで1足を仕上げてしまいます。
「大人になってしばらくやっていなくても、小さい頃の手の感覚が残っているんですよね。わら細工が使われなくなった今でも、たくみの里周辺に住む年配の方々は誰でもできるのではないでしょうか。それほどに、昔はわら細工は生活に根づいたものでした」
今の生活ではわらを触れる機会が少なくなっただけに、幼稚園児から大人まで幅広い年齢層のお客様が訪れるそうです。山崎さんは、若い人にもっとわらのよさを知ってもらい、次の世代にも受け継いでほしいといいます。
「わら細工の家」では、体験のほかにも、ほうきや蓑(みの)といった、わらを使ったさまざまな民芸品が展示・販売され、ずっと昔へとタイムスリップしたよう。のんびりと囲炉裏を囲むうちに、古きよき里山の暮らしを肌で感じます。