宿場通りに建つ昔ながらの造りの外観が目をひく「くるみの家」。佐藤はつえさんが切り盛りするこのたくみの家では、はつえさんの旦那さん、卓司さんがつくり続けてきた、緻密なくるみ細工を使った体験が楽しめます。
たくみの紹介
Vol.26
くるみの家
佐藤はつえ
Vol.26
佐藤はつえ
宿場通りに建つ昔ながらの造りの外観が目をひく「くるみの家」。佐藤はつえさんが切り盛りするこのたくみの家では、はつえさんの旦那さん、卓司さんがつくり続けてきた、緻密なくるみ細工を使った体験が楽しめます。
もとは象牙細工職人を営んでいた佐藤卓司さんがはじめた「くるみの家」。象牙で仏像を彫る仕事を長く生業にしていた卓司さんですが、象牙の売買が禁止になったことを機に、それまで培った緻密な彫刻の技術を生かしたくるみ細工職人へと転身。奥さんのはつえさんは、ひたむきに制作に打ち込む卓司さんを側で見守っていました。「くるみの家」を開いた後、20年以上の間たくみとして活動した卓司さんは2017年に他界。その跡を継いだのがはつえさんでした。
「主人は繊細な手仕事が得意で、厚さ2mmほどのくるみも穴を開けることなく細かな彫刻をつくっていました。生前は制作している様子をなんとなく見ていましたが、亡くなってからは主人が遺した作品たちが私にとってのお手本。見よう見まねでつくっていますが、やっぱり主人のようにはなかなかいかないものですね」
そう謙遜するはつえさんですが、ひとたび道具を手にするとその手つきはとても細やか。小さなくるみに穴を開けないよう一つずつ丁寧に模様を彫っていきます。体験では、はつえさんが模様を彫ったくるみに絵付けが可能。同じものは一つとないオリジナルの根付けができあがります。体験のほかにも緻密な絵柄を彫ったくるみ細工の販売も行う「くるみの家」。なかには卓司さんが手がけたものも並びます。
「うちはたくみの里ができて間もない頃からはじめていて、一時は毎日夜なべしても追いつかないほどお客さんが来てくれていました。今でも当時ほどはいかないけれど、ふらりと立ち寄ってくれるお客さんがいるのは嬉しいこと。私も気ままにお店にいるので、このくらい自由なのがちょうど心地良いんです(笑)」
お店で作業しているひと時が今は何より楽しいと語るはつえさん。その柔和な人柄に惹かれ、近隣の方も多く遊びに来るといいます。卓司さんからはつえさんへ、たくみの技が受け継がれた今でも「くるみの家」には穏やかな空気が流れています。