たくみの紹介

Vol.21

Licca

長壁 総一郎・早也花

みなかみの自然を香りで感じる。
華やかなアロマに包まれた香りの工房。

たくみの里がある群馬県みなかみ町は豊かな自然の宝庫。緑あふれる谷川連峰を望み、山から湧き出る水は利根川となって清らかな水脈をつくりだしています。「Licca」を営む長壁総一郎さんと早也花さんは、みなかみの自然素材を使ってアロマオイルをつくる「香りのたくみ」。天然の木々から生まれる華やかな香りをたっぷりと楽しむことができます。

豊楽館のすぐそば、宿場通りの端に店を構える「Licca」。古民家の引き戸を開け、淡い青色の壁に囲まれた店内に一歩入ると、爽やかな香りがふわりと鼻を抜けていきます。香りの正体は、店主の長壁総一郎さんと早也花さんが手がけるアロマオイル。地元で採れた草木を使用し、自然由来にこだわったフレグランスをつくっています。2020年に「Licca」を創業する以前は、海外協力隊として活動していたおふたり。立ち上げの経緯を早也花さんはこう振り返ります。

「香りにまつわる仕事をしようと思ったきっかけは、海外協力隊でラオスに滞在していた時に児童館に勤めていたこと。子どもたちと地元の自然を学びながら、その資源を生かしたものをつくれたらいいなと考えたのがはじまりでした。フレグランスや香水が好きだったこともあって、草木からアロマオイルをとろうと。でも、帰国が予定より早まってしまって、ラオスでは実現できなかったんです。日本でも同じ取り組みをするべく、『Licca』を立ち上げることに決めました」

基礎を学ぶため、帰国後は化粧品会社に就職した早也花さん。2019年から総一郎さんとともにアロマや精油の蒸留技術を学び、翌年みなかみ町に移住。自宅兼工房を構え、アロマオイルの蒸留をはじめました。使う原料は、主にみなかみの山で間伐された杉やヒノキ。採れた木材は余すことなく精油に使用しています。

「蒸留機は電気やガスでお湯を沸かすのが一般的ですが、私たちは薪や枝葉で沸かしています。もちろん時間や労力は増えるけれど、木材を無駄なく使うことができる。自然の恵みを受けているぶん、できる限り環境に負荷をかけないようにしています」

一本の木から採れるアロマオイルはほんのわずか。それでも手間暇のかかる方法にこだわるのは、みなかみの自然を大切にするふたりの思いがあるからこそ。「みなかみはとにかく自然が豊か。アロマオイルを出発点に、いろいろなかたちでみなかみの環境を守っていきたい」と総一郎さんは語ります。その言葉の通り、地元の森林の整備活動に参加したり、香りにまつわるワークショップを開いたりと、アロマオイルづくりだけにとどまらず、さまざまな活動を行っています。「自然がある場所であれば、世界中どこでも同じような取り組みができるはず。ゆくゆくは再び海外でも活動したい」と意気込む早也花さん。アロマオイルの華やかな香りの裏には、豊かな自然を守るたくみの思いが詰まっています。