たくみの紹介

Vol.22

ますや(鉄-工舎)

西田 學

丁寧な手仕事が光る、繊細で軽やかな鉄細工

宿場通りの半ば、味のある看板が目印のギャラリーショップ「ますや(鉄-工舎)」。明るい陽が差し込む店内には、店主の西田學さんの手がける鉄細工のほかにも、陶器や置物などさまざまな商品が並びます。

たくみの里で25年以上にわたって鉄細工をつくり続ける西田學さん。1995年頃から溶接や鉄加工を学びはじめ、その3年後には自身の作品発表をスタート。当時はまだ「ますや(鉄-工舎)」はなく、東京を中心に各地のクラフト展に出展していたといいます。

「作品発表をはじめたのは、東京にいる知り合いからクラフト展を紹介してもらったのがきっかけ。ここで制作をしては、おのぼりさんのように作品をひっさげて東京のクラフト展で展示販売していました。何度か行くうちにお客さんと顔見知りになって、たくみの里まで作品を見にきてくれる方も増えてきたんです。はじめの頃は来ていただいたら段ボールから作品をひっぱり出してお見せしていたのですが、だんだんと申し訳なくなってきて……(笑)しばらくは自宅に飾っていましたが、見に来てくださる方のためにもギャラリーをつくろう、と一念発起してできたのが『ますや(鉄-工舎)』でした」

お店ができたのは、西田さんが制作をはじめて約10年後の2007年のこと。自身の作品に加え、クラフト展を通じて知り合った作家や、地元で活動する作家の作品など西田さんの審美眼にかなった商品が揃います。「他の作家さんの作品は入れ替わることもあるけど、自分の作品はずっと同じスタイルだね」と笑う西田さん。鉄の丸棒を使った人形や楽器の置物や、試験管と組み合わせた一輪挿しは、制作当初から変わらず続けているものだそう。鉄とは思えないほど繊細で軽やかな作品の数々に、西田さんの丁寧なものづくりが伺えます。

「鉄細工は、曲げてくっつけるだけで終わりじゃなくて、その後の仕上げが一番大事。余分な部分を削ったり、艶が出るように磨いたり……。もちろん手はかかるけれど、最後まで手を抜かずにつくることで作品の出来栄えはぐんと良くなるんです」

お店の裏にある小さな工房は、工具や材料が集まったまさに秘密基地のよう。「火や機械を使うこともあって、体験するのはなかなか難しい。そのかわり、できる限り多くの人に作品を届けたい」と話す西田さん。同じスタイルを貫きつつも、できる作品はひとつとして同じものはない一点もの。ぜひ実際に作品に見て触れて、お気に入りを探してみてください。